情報システム部はどうであると得するのか?

いまさらの感もあるのですが、特にいろいろと日本全国を飛び回るようになって、いろいろなお客さんにお世話になっています。ということで、その辺りで感じたことで、特にエンドユーザーの情報システム部はどうあると、「有利」なのか、ということを書いてみます。

対象は、お金を湯水のように使えないエンドユーザーさんです。とにかくリスクヘッジのためなら何百億円使おうと問題ではない、というユーザーさんはフルリスクを取れという要求以外であれば、SI屋さんの方から「無理なので、ご遠慮します」ということはありません。そのようなユーザーさんは、例外だとは思いますので、ちょっと対象外です。(なんか最近そうでもない説はありますが)

以下、あくまで自分の経験なので、不快な気分の方は、完全スルーでご容赦をお願いします。ベンダー風情が生意気な事を書きやがって、という方もいらっしゃると思いますので、そういう方には事前に、謝罪しておきます。生意気言って申し訳ございませんでした。すみません。ごめんなさい。

1. 前提基本的に、IT産業はクロス・ドメインな産業です。何が言いたいかというと、特定のお客さんや産業にコミットしなくても潰れないということです。これは、エンドユーザーさんの取引先とは決定的に違います。各ドメインで生きている取引先は、無理矢理にでもその業界で生きていかなければいけません。エンドユーザーさんが、多少どころかかなりの無理を言っても、言う事を聞かなければいけないのが現状でしょう。

しかし、IT屋はそうではありません。非常に厳しい状態になった場合、最悪その業界から撤収しても、生き残ることが出来るのであれば、撤収も辞さない、そういう産業です。つまり、あまり無茶をいうお客さんは相手にせず、それなりに商売になるところを相手にしていけば良い、ということになるし、実際にそうしています。

要するにお金の払いのよいところから優先的に人をアサインし商売をして、お金にならないところは相手にはしない、ということです。これは経済原理からして、ある意味当然といえば当然です。口では長い付き合いといいながら、実態はこれかよ、とユーザーさんからすれば不快極まりないと思いますが、残念ながらこれが実態です。事業部ごと撤収するというメーカー系SI屋さんは、別に特別な事でなく、普通にいくらでもあります。

せちがないと言えば、そうですね。が、エンドユーザーにして見れば事は深刻になってしまいます。要は金がないとサクッと取引を切られる、ということもあるということです(もっとも現実には、そこまでシビアなことはめったにありませんが・・・)。とはいえ、湯水のようにお金を使う訳にはいかない。また社内のITは外部に頼まないと最終的ななかなか厳しい、というところはどうしたらよいでしょう、という話になります。

要は「こういう撤収も辞さないところのITベンダーを、金を払わずに、味方につけて、よいノウハウや条件を引き出すにはどうしたら良いか?」という都合の良い話です。あたり前ですが、都合良く行くにはそれなりの「コスト」をかける必要があります。(お金ではないですよ)

2.まず、「優秀な営業を味方につける」IT会社で最後にお客さんの側に立ってくれる可能性があるのは営業(または営業マインドのあるSE)です。各ITベンダーの優秀な営業を自社のファンにするがもっとも効率が良いですね。基本的にIT会社の構造は、客側に立つ営業と、仕事こなす側のSEとが、対立軸をもってバランスを取りながら仕事をまわしていく形になっています。ここで、多少の無理をSEに「お願いできる」のは優秀な営業ですね。営業もSEを敵に回してはうまくいかないので、社内の調整を、貸し借りを含めてうまくまわします。その営業の各部署への「貸し」を自社のために使わせることが正しいです。

社内に貸しのひとつも作れない営業は、かなりのアレなので、相手にする必要はないです。また営業事務な営業さんも意味ないので、無視でいいです。はっきり言っておきますが、優秀な営業は、優秀なSEよりもさらに絶対数が少ないです。残念ながら大抵の営業の方は「行って来い」のただの営業事務なことが多いです。本当に優秀な、一握りしかいない営業が、もし自社の担当になったのであれば逃がしてはいけません。

まずは優秀な営業を、うまく自社のために東奔西走してもらえるように、「お金を払わずに」うまく味方にすることです。そのために、まずやらなければいけないことは・・・

3. 「情報システム部を“明るく”する」アホかと、思うユーザーさんもいらっしゃるかと思います。これは実は馬鹿になりません。まずは自分の会社に営業が来たくなるようにしむけるということが、非常に重要です。特に「金をかけずに」ということが前提です。「お金を使いますよ」というところには、普通に営業は群がりますし、逆に「今年は予算がないな」というところには営業は行きません。それはそうです。売上を上げるのが営業の責務なので、これは仕方がないことでもあります。従って「今年は予算がないな・・・」というところでも、どう足を向けさせるか?ということがポイントです。

お金がなくても営業さんによってもらえると、これによりコミュニケーションの内容があがり、話がしやすくなるということはあります。営業がかなりいい加減な人種です。すなわち明るいところを好む。(蛾ですか?・・まーそこまでは言いませんが、似た習性はありますね・・・)ついでに寄らせるとか、わざわざ来させるには、職場を明るくしておくのは必要条件です。

暗い職場に行きたがる人種は営業にはいません。・・・しかし、残念ながら、大抵の情報システム部は絶望的に暗いです。これは辛い。「性格の明るい部長に明るい職場」ここには自然とベンダーが集まる。これは馬鹿になりません。明るい部長・明るい職場の情報は意外に会社を超えた営業の間の連絡網で共有されます。「それじゃーちょっと行ってみようか?」という気にさせるということは、結構重要です。事実として、そういう話はいくらでもあります。

4. その上で、「業界のリーディングケースを作る」新規性というのは実は社内の評価基準になる事が多いですね。なぜか?金額だけでは、所与の要件が強すぎて、営業の努力ではどうにもならないことがあるからです。また新規要件は、十分宣伝になり、新しい仕事を増やせる可能性もあります。従って、金額の多寡を問わずリーディングケースになる場合は、ベンダーも多少の無理をすることもあります。これを利用しない手はありません。ただし、この場合は、以下の二点に気をつけることが必要です。

4-1 「それはちゃんと動くのか?」いくら新規性と言っても当然リスクもあります。これは技術陣(別にベンダーでなくてもよい。製造元がベスト)の保証をちゃんと取っておく事です。「死んでも動かす」という気概がある部署をちゃんとサポートパスにおいておくことが必要です。ユーザーサイドでは、これは営業に必ず言っておく事。営業もバカではないので、その辺のルートはちゃんと取ります。ただ、「お客さんの強いリクエスト」というのは社内での優先権としては、錦の御旗になるので、ちゃんと言っておくと営業も調整しやすいですね。

4-2 「気がついたらNot Invented Hereだった」新規技術とは名ばかりで、実態は自社開発の後追い劣化コピー製品だった、ということも結構あります。そもそもちゃんと動かないという話になりがちです。特に、これだけのOSSの時代にも関わらずNot Invented Here症候群は厳然と存在します。低コストで時代要請に対応していくには、先端系の技術メリットを積極的に取っていく必要がありますが、最大の難敵はNot Invented Here症候群であることを実感されているユーザーさんも多いかと思います。これはベンダーに「いい加減にしなさい」とユーザーさんから言うしかないですね・・・

5. 加えて、「理詰めで動く」営業を味方につけるとは言え、SEサイドと交渉することもやはり発生します。特に現場同士では普通に発生します。その時に大事なことは「話のロジックの整合性」をちゃんととることです。基本的にSEという人種は、特に良くできる人ほど、非論理的な話を嫌がります。ロジカルに話をして、SEの会社サイドに問題があるときは、(勿論、限界はありますが、)ユーザーさんの肩をもってくれることも起きます。

これを、「金を払っているので言う事を聞け」とか、誰がどう聞いてもあんまり論理的ではないものの言い方をすると、SEは「もらった金以上のことはしません」というスタンスに簡単になります。これはユーザーさんにとってはプラスには決してなりません。

ロジカルに説明すべき、もっとも重要なものは何かというとリスクの管理です。とくにトレード・オフはどこまでできるか?ということをちゃんと事前に現場と腹を割って話しておくことが重要です。経験的にはカードは取っておいてみせないというやり方と、事前に手持ちの札をある程度見せておくという方法がありますが、SEについてはある程度見せておいた方がいいですね。営業だと別のことを考える事があるので、要考慮です。この辺は、一概には言えません。(例えば、納期とか予算のサバ読みですね。もっとも散見されて、もっとも危険な賭けなのですが、さすがにやり過ぎが多いです。・・・ついでにSEサイドにもいいたいですが、“やったことないので、わかりません”というのはアホなので技術屋やめた方がいいです。「出来る」・「出来ない」・「条件付きで出来る。出来る条件は以下・・・」は常に判断できないと、特に実装をしないPMクラスであれば・・まじめにゴミ以下ですよ。)

6. 最後に・・・「頭を下げる」ユーザー企業にとっては「屈辱」だと思います。ITベンダーに「お金を払って、頭を下げて、やって頂く」というスタンスはさすがに承服しかねる、という人が多いのは重々承知です。自分も元ユーザー企業所属だったので、金を払って頭を下げる?そんなアホな話はない、というのもわかります。実際、自分もそうでした。「納期は遅れる、言うことは聞かない、品質は悪い、設計はできない、運用すれば高いだけで障害対策はやたら遅い、最後に挙げ句にお金を追加でください、おまえら本当にSIやったことあるのか?・・・まぁなんというか、そーゆーことが日常茶飯事のITベンダーに頭を下げろだと?アホですか?頭大丈夫ですか?頭を下げるはベンダーでしょう?」お説確かにごもっとも、おっしゃるとおりでございます。まぁ、落ち着いて聞いてください。

結構重要なので、ちゃんと説明します。

まず、ここでポイントは前述でも言ったとおり、ITベンダーはクロス・ドメインだということです。つまりITでは専門家ではあるが、それ以外では専門家ではない、ということです。その結果、「無理なら撤収する」ということが普通にあるということです。特にコンプライアンスが厳しく、赤字の可能性があるなら、その場で辞退ということも普通にあります。そもそも「受注稟議」という、ユーザー様が発注した仕事を受けるための稟議という制度がある会社すらあります。だから「発注してやるから、言う通りにやれ」というやる方は下策になってしまうことがままあります。いいですか?内製化を行わない、ITを外注化するときに発生するリスクは常に顕在化する可能性はあるのです。

こういう背景を考えても、「特に立場が上の場合に、ベンダーに頭を下げておく」というのは、もっとも投資対効果が高いです。実はこれはかなり効果が高い。なぜかわかりますか?ほとんどのユーザーさんは、「頭を下げない」からです。ほとんど感謝されない人種がですね、たまに感謝されるとどうなるかと言うとですね。割と簡単に感激するわけですよ。特にSE。(営業はまぁどうでもいいです。w)

というわけで、頭を下げるところは印象に残るし、便宜を計ろうとするのが人情です。ある意味、継続取引が前提ではない場合、普段威張っている方と、頭を下げてくれる方とどちらに便宜を図るか?そういう問題です。

頭を下げるコストは極論するとゼロです。ケツを捲って、マジ切れするのは最後で十分です。尚、ちゃんと契約しておけば、どんなにベンダーが頑張ろうと大抵の訴訟はユーザー様が勝つようにできているのが、今の司法です。(ITは専門性が高いので、より高度な注意義務をベンダーはユーザー様に負うことが通常)よって、マジ切れするのは後からでも十分ですし、その時にむしろ徹底できます。まずは、威張るのではなく、お願いしますモードはかなり有効なんですよ。

(もっとも、頭を下げてやたら感激するSEや営業は実は御しやすいのが実態で、かなりの手練はむしろ凄い警戒するはずです。世の中そんなもんです。)

7. よって、総括しますと・・・大体以上な感じですが、簡単にまとめると、「明るい情報システム部で、部長も明るく、しかもロジカルに説明し、リスクを隠さずに共有し、論理的に話をし、頭もちゃんと下げる」というユーザー企業様と、「暗い情報システム部で、根暗な部長が、しかもすぐに感情的に説明し、リスクを隠しまくって共有せず、挙げ句に威張り散らす」というユーザー企業様とで、あなたがベンダーの立場だったらどちらに便宜を計りますか?聞くも無駄でしょう。

しかし驚くなかれ、後者のユーザー企業様が多数派なのです。前者のユーザー企業様に比べて「実際の金額ベース」でいくら損しているかわかりますか?・・・・凄い金額です。では、前者を維持するのにお金はかかりますか?ま、かかりません。ま、そういう話です。

ベンダー側でこんなブログ書くと磔にされそうですが、ま、一応もとユーザーなので、その辺の過去の反省だと思ってもらえばいいかと。要は明るい環境で、論理的に話をしながら、互い感謝しながら仕事しませんか?という話です。肩肘張って、喧嘩してシステムができるなら苦労はないでしょう?

と、ここまで書いて、これITに限らねーなと、クロスドメインな会社との付き合いだと普通にある話ですね・・・と思いましたが・・

ま、そんな感じです。思いっきり釣り記事になった予感もするのですが、まぁ年末なんで、こんな感じもいいかと。お互い笑って、明るく新年を迎えたいですね。

でわでわ