2014年のSIビジネスとかそのあたり

というわけで2014年に突入ですが・・・

景気が回復しつつある現状で、SIの受注も好調なようです。ユーザー企業でも多少の予算の余裕も出てくるところもあり、システム投資には多少前向きになっているところも感じます。多少のでこぼこや、業界・業種によって色合いは異なるでしょうが、今後数年は景気の回復基調はコンセンサスになりつつあるようです。IT業界も例外ではないでしょう。もたもたしているビッグデータ案件を尻目に、システムリプレースや既存改修、新規でのシステム開発もスタートしつつあり、SI業界の件数ベースは今年は昨年を確実に上回るでしょう。

とはいえ一方で不採算案件も相当増えるように見えます。結果、SIビジネスはトレンド的には案件増・売上増ですが、利益減(または横ばい)というのが実態になるかと。要するに単金はそうそう簡単にはあがりませんが、案件は増えて、人繰りが追いつかず、結果限りなく失敗に近い「よくわからないシステム」の赤字案件が急増する感じです。その兆候はいろいろ出始めています。

案件獲得については、いろいろとリスクチェックの仕組みが各SI屋さんには当然あるとは思いますが、金を積まれればやらざるを得ないわけです。やってみたらハマッタなんてのは、よくある話です。景気も良くなれば営業サイドもがんばります。そんな感じで「いろいろと無理があるぞ」プロジェクトが量産されます。というか、されています。その辺に結構転がってるし。いや、まじで。

まぁ人がいないわけです。特にできる人材不足が顕著です。これは一つは、技術的に検討することが増えていることが原因のひとつです。まぁとにかくやらなければいけないことは増加の一方ですからね。もう一つはそもそもの若手不足です。全日本的な人口減のボディーブローが効き始めてます。

本来的に言えば、ユーザーサイドである程度自衛策的に内製化的な動きをやっておくべきでしたが、残念ながら時間切れな感じです。この景気の上方回帰の流れの中で、システム投資はやれるときにやっておけ圧力が強くなりますが、とはいえ人員強化ほどの強烈なトレンドにはなりません。よって、ユーザーサイドではSI屋依存が、残念ながら強化されます。SIサイドも強い引き合いは久しぶりの機会なので、頑張って案件は取りにいくでしょう。表面上の需給バランスの一致はマーケットメイクをより強固にします。そして、この流れは、いろいろな問題を完全に先送りします。

他方、現場を見てみれば、このような状態になってくると、なかなかリスクのある新技術は採用したくないのが人情です。「だって、回らないプロジェクトさらに回らなくしてどーすんのよ」的なPMの愚痴モード全開です。案件の数だけは増えますからね。

腕のあるPMにしてみれば、今時のクラウド技術やら新技術とやら試しておきたいのが本音でしょう。SI屋自身のR&Dはほぼ削減の一直線のなか、エンジニア的には自力救済的に自分の技術力を上げておかないとまずいです。特に、今後の「新技術」はトレンド見る限り、クラウド方面からしか出てきません。ということは、クラウドの主戦場が分散処理に移っている以上、新しい技術トレンドは分散処理がベースになってきます。これをSIで利用する、というのは相当ハードルが高いというか、無理がかなりあります。というか無理ですよ。普通のSIですら回らないのが現状です。

さて、割とデッドロックな感じのSI所属や業務系のエンジニアはどうするのか?というのがたぶん今後の話題になります。というか、既に各所でなっているみたい。見切りをつけて某携帯ゲームさんに鞍替えした方々は、途端に土砂降り状態で手持ちの傘がないという状態のようですし。

んで、どーすんだって話しなんですが・・・まぁ実も蓋もないのですが、見ていて思うのは、結論的には「転職含めて進路をじっくり考える」機会到来かなと思います。お前が言うな、って話はあるんですが、新年なんで書いていいかと。

予想ではありますが、今後5年は国内のエンジニアは転職のチャンスだと思います。おそらくここ20年で一番の機会ではないかと。主として理由は以下です。なお、行く先どこよ、って話ですが、まずは回復基調にあるユーザー企業さんになるでしょう。

1.景気の上向き時は人・もの・金が動くので、転職自体がしやすくなる。これは異論はないと思います。選択肢が単純に増えます。

2.SI限界を目の当たりにしたユーザー企業の自衛策も(それなりに)出てくる。良質SIの減少はまさに、悪貨は良貨を駆逐するがごとく不良案件が増大してきます。自社体制の増強は各ユーザー企業にとっても焦眉の急です。ある程度内製化を考えるところでは人を取り始めるでしょう。(まぁそう簡単にうまく行かないと思いますが・・)

3.ユーザー企業自体の統合が進むので、IT部門の強化や投資需要が増大し、人員許容のキャパが増える。今後の景気回復は、特に労働集約的産業でのM&Aを加速させます。人手が足らないという流れは、間違いなく賃金上昇圧力になり、そのまま人件費の高止まりどころか上昇になります。各企業は、その賃金上昇に見合うだけの労働生産性の向上が必要になりますが、これは当然投資余力があるところに限定されます。要するに、なんとかぎりぎりなところは、「注文はくるが、その量とそのコストでは捌ききれない」という状態になります。結果、業界のトップエンドがどんどん成長するが、二位以下は突き放されるという結果になるでしょう。当然の結果としてM&Aが進みます。これは情報システム部門の統合にそのままつながります。トップエンドでは人員の増強に入るでしょう。(統合された方は必要な人材を残してリストラ対象)

そんなわけで、人は動く時期が来るかなとは思います。では、今後の方向性として、どう考えればよいか?ということですが・・・

■完全安定志向の人
えっとですね。この場合は、移動不可です。SI屋に張りついてどう生き残るか?に徹するべきです。ただし、基本的にじり貧は覚悟すべきです。消費税は上がります。実質可処分所得は減少します。また、管理職以上のポストは老年層の独占になり、結果、出世と給与の上昇はきわめて厳しいです。しかしながら、SI市場はデスマが増加するとはいえ、マーケットとしては強固ですのでそれはそのまま残ります。そのレベルでの生活は保証されるでしょう。土方で頑張る。デスマで生きる。これも人生です。職業に貴賎なし。ローリスク・ローリターン。余計な邪魔はしないでください。これも選択です。

■ある程度リスクは仕方がないという人
ハイリスク・ハイリターンとか、ローリスク・ローリターンだと普通に死ぬので、ミドルリスク・ミドルリターンな人。まぁこんなご時世です。リスクフリーが一番良いけど、そんなこと言っても、ないものねだりですし。
こういう場合は、各マーケットのトップエンドに近いユーザー企業あたりが一番いいと思います。市場は広がってくるかなと思います。ただ、特にユーザー企業に軸足を移す、という人は老婆心ながら以下に留意された方がよいかと。

1.エージェントは使わず、自分でちゃんと探すこと。
エージェントは使っても情報収集程度にする。必ず自分の手で「十分に調べる」ことが重要です。会社の雰囲気。トップや経営陣の資質。情報システム部の評判。時間はかけて構いません。最悪数年は調査にかかる位の気持ちが必要です。焦る必要はないと思います。「従業員をちゃんと採用します。」というところと話を継続的にすべきです。特にユーザー企業に移るのであれば、とにかく調べるというスタンスが大事です。

2.中規模以下の企業に行くときにはそれなりの理由が必要。
上記のように、中途半端な立ち位置の企業は、トップエンドに近い将来吸収されます。転職先がいきなり吸収・合併されて、速攻で追い出されましたでは立つ瀬がまったくありません。今後の5年は今まで以上に凄い勢いで「惰性で生きてきた」企業は姿を消すでしょう。強いアゲインストや、強いフォローの風では企業の経営の巧拙は、顕在化しません。「若干フォロー」という状況は企業のスタンスがまともに差にでます。しかしながら、敢えて自ら中小企業+業界で随一のものがある、ところは別です。それは別に考えた方がいいですね。こういうところのITはそれはそれで面白いので、選択肢としては考えるべきでしょう。

3.朝ちゃんと起きるということができるようになっておくこと。
これ実はエンジニアにはハードル激高いというのは現実ですが・・まぁユーザー企業で働くには普通にできないといけません。転職時には気力・体力が削られますので、朝早く起きてジョギングでもして、体力をあげておくということもよろしいかと。まぁ、大抵のエンジニアの方はこの辺でアウトですが・・・単純に「郷に入りては郷に従え」ってだけです。

4.当たり前ですが「自分に投資しておくこと」が今まで以上に重要。
当たり前ですが、「自分を売りに出す」ということは「自分の売りものはなにか」ということを明確にすることになります。ユーザー企業に行って自分は何ができるのか?気がついたら、外注管理とパワポ・ワード職人でしたって人はやはり厳しい。とにかく、手を動かすようにしておく。PMになってくるとパワポやワードはうまくなりますが、あっと言う間に手が動かなくなります。コンサル系の仕事は、よほどその業界の事情に詳しくない限り、ユーザー企業に移った段階でSI屋叩きの仕事専従になります。

お勧め案は
・とりあえずクラウドが使えるようになっておく。これは便利。
・簡単な数学ぐらいはマスターしておく。別にデータサイエンティストとかイラン。
・要件をどう切り出すかの手法は自分なりの方法を確立しておく。
・運用でヤバイところはどの辺かアタリがつくぐらいの経験は積んでおく。
・せめてjavaと普通のSQLは使えるようになっていてください。お願いします。

趣味みたいなプログラミング言語とかマスターせんでいいから、上の内容を押さえておけば、来てくれというユーザーはたくさんありますよ。すげー、あります。

■一攫千金の人
ハイリスク・ハイリターンですよ。え、なんでSI屋にいるのかって?それはトレーニングとノウハウの吸収ですよ。捲土重来・虎視眈々、機会を見て旗揚げですよ。という人は、まず上場しそう会社に潜り込んでください。すげー増えてるみたいです。(遠い目
運が良ければストックオプションでウハウハです。また、その他にもいろいろわかると思います。正直、(自分の立場は置いておいて)いきなりの起業はお勧めではないです。先の起業まで考えている人は、まずは転職先で、できれば営業をやってみてください。如何に自分や周りがいままで看板で食えていたかわかります。その上でどうするか考えるべきです。

まぁなんというか、デスマ警報を逃さないようにしつつ、いろいろ調べてみっか、という季節になりそうですね。自分的に他人に転職指導とかしている場合じゃないのですが、某雑誌にお先真っ暗なエッセイとか書いてしまったので、そのフォローでございます。どうぞご自愛ください。